昨日、ジェノグラム(心理的家系図)の本をご紹介しましたが、そこで思い出したのが、イノセント(石井竜也、2009年)です。
NHKファミリーヒストリーで石井竜也さん編がありましたが、この本を合わせて読むとバッチリです!!
一個人を考えた場合、その人自体の成育史、さらに拡大して先祖調べで得られた家族の歴史という、垂直方向の時間軸が考えられます。また、現在の家族・親戚、そしてとりまく人物といったネットワークという水平方向が考えられます。
ファミリーヒストリーは時間軸、そしてこの著書は水平方向(それも、自身を何層にも取り囲む環境)がよく記述されているものだと、感心させられました。
自己分析が素晴らしいと思いました。
荒くれ者の多い港町で、自分はなじめず、また祖父はこわい、母は教育者の娘で厳しい、そこでやさしい父。父親は七人兄弟の長男で、和菓子屋を継ぐ。父とおばは、祖母に似て穏やかで優しいけれども、叔父たちは祖父に似て、とにかく怖い。和菓子屋で、常に親戚やら従業員が十人ぐらいドタバタしている騒々しい家で、ひっそりと一人の世界にこもる。東京に出ていくのを後押ししてくれたのは父。それで、東京に出て、はっちゃけちゃった!という話。
港町>学校>家庭という自分を取り囲む環境で抑圧されたものが東京で解放されてしまったようです。
家族関係・環境からの自己分析、スゴイと思いました。でも、そんな中、唯一心を寄せることができた父親がいたというのは、救われたことだと思います。外の環境、家の環境とも両方とも自分の居場所がなかったら、生きていくことができませんから。
読む人が、自分の置かれた位置や家族・環境との関係性を気づかせてくれる、すぐれた一冊だと思います。キンドル版が安いのでオススメです!!